国内アパレル事情
新型コロナ感染の影響でアパレル業界は大変な状況ですが、国内のアパレル業界は数年前から大きな変化が起きています。要因は、急速な海外生産シフト、消費者マインドの変化、社会構造の変化、技術革新など多様な変化が一気に発生したためと推測されます。今回は、これまでの変化をグラフで示すと共に、これからの方向性を探っていきます。
日本で消費される衣類の生産国推移
1990年当時、国産品は約50%を占めていましたが、現在は2%台です。
中国製が一時的に86%まで伸びましたが現在は60%台に低下し、逆にベトナム製が急伸しています。
この状況より国内衣類生産のアップは期待できず、高機能、高感性、クイックデリバリーなど差別化製品の生産に活路を見出すことが望ましいと考えます。
グラフ① 国内消費される衣類の生産国推移(シエア%)
(出所:日本繊維輸入組合統計より高木こういち氏作成)
アパレル外衣の需給バランス推移
1990年当時は需給バランスがとれていましたが、その後急速な供給過剰の状況です。
この30年間で消費数量が16%成長したのに対し、調達数量は2倍以上の約30億点に増加しています。
このようなアンバランスの要因の一つに消費ニーズの急激な変化があります。
経産省の統計調査によれば、1世帯当たりの年間消費支出額(被服・履物)は、1991年が30万2千円に対し、2016年には13万9千円と年々減少傾向に。供給者が市場をリードする時代は、もう完全に終わったように思われます。
グラフ② アパレル外衣の需給バランス推移
(出所:ファッション販売2019年2月号)
今後求められること
過剰な輸入を改善しながら国内生産をどのように維持していくことが、環境問題も含めて早急に検討すべき課題だと考えられます。消費者ニーズに適応した製品を短納期で生産するシステム、無縫製衣料の拡充、高機能製品の拡充などカスタマイズされた製品の製造や販売システムの構築が急務です。
また、世界がデジタル革命、AI革命などを通じて高度化に向けて進化している中、IoTを活用したビジネスモデルの普及も急がれるでしょう。
日本繊維産業連盟では、2030年を目標として
①イノベーションによる新たな価値創造
②人材の育成
③多様性への対応
などを提言しており、その成果に期待が集まります。
そして、このような複雑な問題を乗り越えて再び活況なアパレル市場にしていくためには、産業界だけでなく、国民一人一人の意識改革も重要になってくると考えます。