需要高まる抗ウイルス加工製品について
2020年は年初より新型コロナウイルスとの戦いになっています。3月11日に世界保健機構(WHO)がコロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック宣言を行い、各国で消毒液、マスク等の需要が急拡大しました。まだ人が免疫を持っていない新たなウイルスが発生すると、今回のようにパンデミックとなり、患者数及び死亡者数が急増します。実際に20世紀には以下の3つの大きなパンデミック(表1)が起こり多くの死者が出ました。
表1.
§4.ウイルスの写真
ウイルスの大きさは、18~300nmと細菌に比べ非常に小さいので電子顕微鏡で観察される。
( 引用;国立感染症研究所 HP)
繊維の抗ウイルス加工
日本のテキスタイル業界は世界に先駆けて衛生加工素材の開発・販売に取り組んでおり、各種の衛生加工製品が市販されています。プッシュ式アルコール系消毒剤使用で手指を介した感染は効果的に防止できますが、衣類に付着したウイルスの対策が全くなされていなかった事が着目され、衣類やインテリア用品を対象とした抗ウイルス加工製品の開発が始まりました。
抗ウイルス加工は、2015年日本提案により国際規格(ISO18184)が決定され、(一社)繊維評価技術協議会が2015年より、抗ウイルス加工繊維製品のSEKマーク認証を開始。又、2016年に抗ウイルス性試験方法がJIS化(JIS L1922)されました。
§1.(一社)繊維評価技術協議会が認定する抗ウイルス加工製品
<ラベル表示>
・抗ウイルス加工とは、繊維上の特定のウイルスの数を現象させる。
(注意:病気の予防や治療を目的とするものではありません)
<試験対象ウイルス>
①ATCC VR-1679 (インフルエンザウイルス:エンベロープ有)
②ATCC VR-782 (ネコカリシウイルス:エンベロープ無)
<安全性評価項目>
・急性経口毒性 ・変異原性試験 ・皮膚刺激性試験 ・皮膚感作性試験
<抗ウイルス加工の評価基準>
・規定された抗ウイルス性試験方法にて、ウイルス感染価が2時間で1/1000以下になると合格と判定される。(詳細は当協議会のHPを参照)
§2. 抗ウイルス加工剤の種類
有機系化合物と無機系化合物に大別され、安全性評価項目をクリアした薬剤が、目的に応じて使用されている。(ここでは薬剤の紹介は割愛する。)薬剤の加工処方は、浸漬法、スプレー法、コーティング法、その他各種ある。
§3.抗ウイルス加工製品の例
項目 | 製品群 |
---|---|
衣料品分野 | 作業着(医療・介護)、靴下、手袋 ストッキング、シャツ |
非衣料分野 | マスク、嘔吐物処理シート、寝具 スプレー,インテリア用品 |
発展する抗ウイルス加工製品
抗ウイルス加工製品は年々増加傾向といわれていますが、今回のパンデミックを受けて急速に需要が高まることが予想されます。これまでに開発された抗ウイルス加工剤が新型コロナウイルスに対しどこまで効果があるのか、早急に究明される事が望まれています。