無水染色の動向(2024)
国際的な環境意識の高まりの中、染色業界においては無水染色への意識が高まっています。
2年前に無水染色の動向について述べましたが、その後無水染色機(超臨界二酸化炭素染色)の導入はアジアを中心に増えています。
一方、国内においては超臨界二酸化炭素染色がNEDO先端研究プロジェクト(2022~2024)に採択され研究開発が進められています。現在は社会実装に向けた取り組みが進められているとのこと。ここでは公開情報をもとに諸外国の状況も含め超臨界二酸化炭素染色の開発状況についておしらせします。
近年、超臨界二酸化炭素染色が普及し始めたのは、ナイキ社はじめグローバルスポーツアパレルが相次いで無水染色されたポリエステルニットを優先的に採用し始めたことに起因しています。国内においては、今年のパリオリンピック、パラリンピックの公式ユニフォームを提供したアシックス社が、超臨界二酸化炭素染色した素材を採用と発表。NEDO先端研究プロジェクトによれば、革新型超臨界二酸化炭素染色装置の開発と実用化は2030年と発表されていますが諸外国の動きは目覚ましいものがあります。欧州メーカーの超臨界を利用しない無水染色機「Endeavour」やインドの「SUPRAUNO」(前処理と超臨界染色の組み合わせ)など各社が実績の拡大を図っています。
国産繊維製品の特徴は他国に真似できない風合い、色合い、機能性だと思いますが、無水染色機を使用することで差別化ができなければ意味がありません。これまでの技術を無水染色でいかに生かすかが今後の課題と考えます。
2年前に無水染色の動向について述べましたが、その後無水染色機(超臨界二酸化炭素染色)の導入はアジアを中心に増えています。
一方、国内においては超臨界二酸化炭素染色がNEDO先端研究プロジェクト(2022~2024)に採択され研究開発が進められています。現在は社会実装に向けた取り組みが進められているとのこと。ここでは公開情報をもとに諸外国の状況も含め超臨界二酸化炭素染色の開発状況についておしらせします。
超臨界染色とは
超臨界状態の二酸化炭素を使うと特定の分散染料が溶けるため、これを応用してポリエステル繊維の染色を行う処方。超臨界二酸化炭素染色開発の歴史と現在の染色装置導入状況
1991年 | ドイツで超臨界を使って繊維を染色する論文が発表される |
2003年 | オランダのDye Coo社が超臨界二酸化炭素染色機を開発 |
2009年 | タイ企業がDye Coo社の超臨界二酸化炭素染色機導入 |
2014年 | 台湾企業がDye Coo社の超臨界二酸化炭素染色機導入(複数の企業) |
2015年 | 日本でYKKが日阪製作所の超臨界二酸化炭素染色機導入(Gipper用) |
2018年 | ベトナム企業がDye Coo社の超臨界二酸化炭素染色機導入 |
2020年 | インドネシア企業がDye Coo社の超臨界二酸化炭素染色機導入 |
2022年 | インド企業がDye Coo社の超臨界二酸化炭素染色機導入 |
2024年 | 中国でも超臨界二酸化炭素染色機が稼働中との情報あり |
超臨界二酸化炭素染色機(Dye Coo社)の主な特徴と課題
特徴 | 課題 |
・染色使用水および廃水がゼロ | ・装置が高価である |
・染色助剤不要 | ・釜洗浄に手間がかかる |
・PET染色後の還元洗浄が不要 | ・PETニット限定で織物への応用が困難 |
・染色後の乾燥が不要 | ・精練工程、仕上工程ができない |
・PPやアラミド繊維の染色が可能 | ・ビーム染色のため風合いソフト化困難 |
・水資源の少ない地域でも染色が容易 | ・高圧容器取り扱いの法規制 その他 |
国内開発装置と現行他社装置の比較
国内開発中装置 | 現行他社品(Dye Coo社) | |
染色媒体 | 二酸化炭素 | 同左 |
染色条件 | 120℃(約25MPa) | 同左 |
装置素材 | ステンレススチール | 複合素材 |
染料投入方式 | 外部方式 | 内部方式 |
装置価格 | 未定(高価) | 3~5億円(3基セット推定) |
釜洗浄 | フィルター方式 | 手作業(?) |
精練工程 | 開発中 | 既存水系装置使用 |
仕上げ工程 | 開発中 | 同上 |
ラボ試験装置 | 2024年開発済み(循環式) | 販売中(バッチ方式) |
無水染色で国内繊維製品の良さを出すことが課題
近年、超臨界二酸化炭素染色が普及し始めたのは、ナイキ社はじめグローバルスポーツアパレルが相次いで無水染色されたポリエステルニットを優先的に採用し始めたことに起因しています。国内においては、今年のパリオリンピック、パラリンピックの公式ユニフォームを提供したアシックス社が、超臨界二酸化炭素染色した素材を採用と発表。NEDO先端研究プロジェクトによれば、革新型超臨界二酸化炭素染色装置の開発と実用化は2030年と発表されていますが諸外国の動きは目覚ましいものがあります。欧州メーカーの超臨界を利用しない無水染色機「Endeavour」やインドの「SUPRAUNO」(前処理と超臨界染色の組み合わせ)など各社が実績の拡大を図っています。
国産繊維製品の特徴は他国に真似できない風合い、色合い、機能性だと思いますが、無水染色機を使用することで差別化ができなければ意味がありません。これまでの技術を無水染色でいかに生かすかが今後の課題と考えます。