注目される深紫外線
今年に入って深紫外線が注目されています。その理由の一つは新型コロナウイルスの世界的な流行。新型コロナをはじめとする有害なウイルスや細菌を駆除する対策の手段として各社が深紫外線の開発を行っており、すでに多くの分野で製品化が進んでいます。
ここでは、その特徴と応用例について紹介します。
(引用:ウシオ電機資料)
深紫外線とは
波長域には諸説ありますが、一般的な紫外線より短波長の概ね100~280nmの波長域を持つ紫外線のことです。各社より多くの深紫外線LED装置が開発されていますが、その波長域は企業により僅かに異なり、各社独自のデータで機能や特徴を紹介しています。
深紫外線の殺菌・除菌効果
深紫外線による新型コロナの殺菌、除菌効果が確認され、特にこの分野で製品化が多くなされています。
ウシオ電機と広島大学の研究チームは中心波長が222nmの紫外線に新型コロナウイルス不活化効果があることを世界で初めて確認したと本年9月に発表しました。下表が結果の概要です。
照射時間 | 新型コロナウイルス不活性化率 |
---|---|
10秒 | 88.5% |
30秒 | 99.7% |
60秒 | >99.7(検出限界以下) |
深紫外線応用例の紹介
①自動紫外線照射装置
日本大学医学部、理化学研究所、(株)ファームロイドにより開発された紫外線ロボット「UVBuseter」は搭載の紫外線ランプ(253,7nm)で新型コロナウイルスを短時間で不活性化する事を証明し、五輪施設の浄化対策等に期待されている。
7秒照射でウイルス価は1000分の1に減少、10秒照射でウイルスは検出限界以下になると報告されている。 ((株)ファームロイドHP 2020.9.23.)
②深紫外線LED水浄化ユニット
豊田合成が量産開始の水浄化ユニット「WOSH」は、深紫外線照射とフィルターろ過・吸着、塩素消毒を組み合わせることで高い浄水性能を実現。水道水へのアクセスが難しい場所での水循環再利用を可能にする事で期待されている。(化学工業日報2020.10.2)
②表面殺菌装置「クララン」
旭化成は深紫線LED「クララン」(波長:260~270nm)が、新型コロナウイルスに対して優れた殺菌効果があることを確認し、水の殺菌用途以外に、人の手が触れる物や箇所の表面殺菌用装置での展開を開始する。(化学工業日報 2020.10.14)
深紫外線のメリット
新型コロナ禍の影響で深紫外線が一躍注目されるようになったが、深紫外線の応用には次のようなメリットがあります。
①小型で高出力が可能
②オーダーメイドで波長調整が可能
③長寿命で省エネ
これらの特徴を生かして、新型コロナウイルス対策は勿論のこと、空気の浄化、水の浄化、半導体分野、樹脂硬化分野、分析・計測分野等で展開が期待されています。また、紫外線は一般的に人体(皮膚など)に対して悪影響を及ぼす危険性がありますが、波長を調整することで安全性が確認されていることから、今後の成長が期待できる技術です。