プラスチック及び繊維による海洋汚染(2)
北極海に大量の繊維状プラスチックとの報道
カナダの研究チームが北極海の海水に大量の繊維状の微小プラスチック(マイクロプラスチック)が存在するとの結果を今年1月に公表しました。
見つかったマイクロプラスチックの約9割がポリエステルなど化学繊維由来で、家庭で衣類を洗濯した際の排水が世界の海の汚染につながっている可能性があると警告。研究チームは平均で長さ1mm程度の繊維マイクロプラスチックが海水1㎥あたり約40個と推計しました。
家庭で衣類を1点洗濯すると素材により数百万個の繊維屑が流出し、米国とカナダの両国で年間3500兆個の繊維状マイクロプラスチックが環境中に排出されているとの試算もなされています。洗濯をシュミレーションしたマイクロファイバーを作成し水中での分解率(250日)を研究した米国ノースカロライナ州立大学の調査結果を紹介します。最も分解したのはコットンで、難分解だったのはポリエステル、繊維の発生が少なかったのはレーヨンと報告されています。(Fig① 参照)
Fig①洗濯後の繊維の生分解性比較
(提供:米国ノースカロライナ州立大学調査)
日本の調査結果
環境省が2014年から2019年までの6年間、日本沖合で海洋浮遊ごみ量の調査を実施しました。方法は目合い0.3mm程度の網を使って海面近く(水深1m程度)の浮遊ごみを収集するやり方です。結果はペットボトル関連とロープで全体の約36%を占めており、3位の木材を除くと全体の92%がプラスチック由来のごみでした。繊維に限定した詳しい調査はまだ実施されておらず、今後の調査に期待しています。
(引用:環境省/漂着ごみ対策総合調査検討業務による)
求められる環境に対する意識改革
化学繊維由来プラスチックの海洋汚染は、欧米では深刻な問題と捉えられており、これから注目されてくると考えています。国内では生分解性やバイオマス原料由来の繊維が既に開発されており今後の展開に期待します。また、ボーケンは生分解性の検査を行いラベル申請が可能となったと発表しました。世界人口の増加に伴い、これからも合繊(ポリエステル中心)の増産が予想されますが、廃プラによる海洋汚染のように大きな問題となる前に効果的な対策が必要です。それには生分解性素材等への転換だけではなく、廃棄量を減らしてリサイクルを推進するなど環境に対する一人一人の意識改革も必要になってくると考えます。