ストックホルム条約(別名POPs条約)と紫外線吸収剤
ストックホルム条約とは、環境中で残留性、生物蓄積性、人や生物への毒性が高く、長距離移動性が懸念される残留性有機汚染物質(POPs:Persistent Organic Pollutants)の製造及び使用の廃絶や制限、その意図的でない生成による放出の削減等の規制に関する条約です。
これまで多くの化学物質が廃絶対象物質となってきましたが、繊維用機能加工剤としては、ポリエステル用防炎剤のHBCD(ヘキサブロモシクロドデカン)やフッ素系撥水剤から発生するとされるPFOA(パーフルオロオクタン酸)その他が挙げられます。
本条約のシステムを簡単に述べると、次に示すとおり加盟国から提案された有害物質を下記のような手順で検討を行い、決定後は各国が法律で取り締まるやり方です。
東京農工大、北海道大などの国際研究チームが世界16カ所で海鳥145個体を調べたところ、半数以上の76個体の体内からプラスチック添加剤成分が見つかりました。
プラスチック製品には臭素系難燃剤や日光による劣化を防ぐ紫外線吸収剤が添加されますが、こうした添加剤は分解されずに海鳥の体内に溜まります。そして、一部の添加剤は生物の免疫などに影響することが指摘されています。今回の報告によればガラパゴス諸島の海鳥でも紫外線吸収剤が確認されていて、胃中にプラスチックが存在する個体で添加剤濃度が高かったとの報告もあり、更なる原因究明が必要と考えます。
(出所:トロント大などの予測。単位は万トン)
(ケープタウン大、ピーター・ライアン博士提供)
これまで多くの化学物質が廃絶対象物質となってきましたが、繊維用機能加工剤としては、ポリエステル用防炎剤のHBCD(ヘキサブロモシクロドデカン)やフッ素系撥水剤から発生するとされるPFOA(パーフルオロオクタン酸)その他が挙げられます。
本条約のシステムを簡単に述べると、次に示すとおり加盟国から提案された有害物質を下記のような手順で検討を行い、決定後は各国が法律で取り締まるやり方です。
POPs条約の概要
紫外線吸収剤(UV-328)の問題
2021年1月開催の第16回 国際技術検討委員会(POPRC)で議論された3物質の中に、UV-328(紫外線吸収剤)があります。
議論に上がった理由はプラスチック添加剤として使用される紫外線吸収剤の生態系への影響が懸念されるからと推測します。東京農工大、北海道大などの国際研究チームが世界16カ所で海鳥145個体を調べたところ、半数以上の76個体の体内からプラスチック添加剤成分が見つかりました。
プラスチック製品には臭素系難燃剤や日光による劣化を防ぐ紫外線吸収剤が添加されますが、こうした添加剤は分解されずに海鳥の体内に溜まります。そして、一部の添加剤は生物の免疫などに影響することが指摘されています。今回の報告によればガラパゴス諸島の海鳥でも紫外線吸収剤が確認されていて、胃中にプラスチックが存在する個体で添加剤濃度が高かったとの報告もあり、更なる原因究明が必要と考えます。
海洋プラスチックの排出予測
2030年の海洋プラスチック排出予測をみると下表のようになり、先進国や新興国の積極的な対策が望まれます。
対策を取らなかった場合 | 野心的な対策をとる場合 | |
高所得国 | 360~740 | 190~410 |
中間所得国 | 3040~7720 | 1660~4570 |
低所得国 | 190~530 | 120~350 |
合計 | 3580~9000 | 1980~5330 |
おわりに
繊維業界でも紫外線吸収剤(UV-328タイプとは異なる類似化合物)の使用が増加傾向にあるため、POPRC(国際技術検討委員会)の動向を注視したいと考えます。又上表に示すように我々先進国やアジアの中間所得国が、先頭に立って海洋プラスチック汚染を削減する事が、地球上の生態系を守るうえで最重要課題と言えるでしょう。(ケープタウン大、ピーター・ライアン博士提供)