欧州ELV規制と経産省の環境配慮設計ガイドライン
欧州の動き
欧州委員会は昨年7月に自動車の車両設計から生産、廃車までの過程における循環性向上に向けた、自動車設計・廃車(ELV)管理における持続可能性要件に関する規制案を発表しました。現行の「ELV指令」(「End-of Life Vehicles Directive」の略で使用済みの自動車から出る廃棄物を削減し、自動車に関わる産業の環境負荷を軽減する事を目的としたもの)と「自動車型式認証における再使用、再利用、再生の可能性(3R)に関する指令」を1つにまとめて規制化しようとするものです。現行法令下で廃車からの原材料のリサイクル率はかなり上がりましたが、プラスチックや電子部品、複合材料のリサイクル率は非常に低いと指摘。 こうした背景から新しい規制案では
(1)部品の再利用や回収を促進する車両設計の推進、
(2)新車生産に必要なプラスチックの25%以上の再生プラスチックの利用(うち廃車由来25%)、
(3)廃車由来の再生材の増産、品質・価値の向上、
(4)廃車回収の増加、
(5)事業者間の廃車に係る公正なコスト負担配分
などに重点を置いています。
経産省の動き
経産省は環境に配慮した繊維製品を作っていかないと繊維輸出が出来なくなるとの危機感から、2022年に「2030年に向けた繊維産業の展望(繊維ビジョン)」を発表しました。更に我が国の繊維関連企業が、今後需要拡大が見込まれる海外市場において競争力を維持・確保していく事を目的に、昨年1月「繊維製品の資源循環システム検討会」を立ち上げました。そして今年3月、繊維製品の資源循環システム構築に向けた課題と取り組みの方向性をまとめた「環境配慮設計ガイドライン」を発表。内容は製品ライフサイクルに応じた11項目からなり、今後は規格化を進め、2026年までにJIS化、27~28年を目途にISO化を目指すとあります。つまり欧州環境規制に追従するのではなく、日本主導の環境配慮規格の制定を計画しています。
(環境配慮設計項目)
・環境負荷の少ない原材料
・GHG排出抑制、省エネルギー
・安全性への配慮
・水資源への配慮
・廃棄物の抑制
・包装材の抑制
・繊維屑の発生抑制
・長期使用
・リペア・リユースサービスの活用
・易リサイクル設計
・繊維製品のリサイクル
*これから、項目ごとに評価の基準や方法が示される予定。
国内の動き
(写真は本文の内容と関係ありません)
欧州の中でもフランスは「廃棄物を発生させる製品の環境に関する品質と特性に関する消費者への情報提供の義務に関する政令」を発行し、リサイクル素材の利用率やトレーサビリティー等について情報公開を義務付けていますが、これに適応し拡販を図っている日本の大手アパレルもあるとのこと。
一方国内繊維関連各社は、欧州の環境規制を見据え、車両内装材のモノマテリアル化に取り組んでいます。たとえばカーシートに使用されているポリエステル複合素材をポリエステル100%に変更とか、クッション材をポリエステル100%にする取り組みです。またナイロン漁網をリサイクルして内装用樹脂に再利用、リサイクル繊維使いでエアバッグやスリングベルトを実用化する例も出ています。欧州環境規制の動きはいずれ北米やアジアにも波及する事が予想され、国内繊維製品の資源循環システムが一日も早くスタートする事を期待しています。